20150712

殿様の家

   
  
萩の割烹屋で横に座った爺さん曰く 『うちを是非見に来なよ。』 は現博物館の旧毛利邸であった。
その壮麗さは眼を見張るものがあって、総工費は今の金額に直すと150億。 造園など全て込みだとは思うけれど木造建築の建築費としては大げさな数字にも思える。 ただ、それも一見してみれば納得出来るものだった。 山口ではインフラとしての電気などまだ無い頃、自家発電所と蓄電池など最新の技術を備えたもので、設備的な先進性だけではなく、使用される建材を見ても同じ額を払っても今同じものは作れまいと確信するものであった。

 
   
   
  
  
  
 

   
 
  
   
 
 
  
 



玄関を入ってこの廊下を見た瞬間鳥肌が立った。
地方とはいえかつての殿様がどの程の力と財力を持っていたか垣間見えたからだ。
旧岩崎弥太郎邸や旧鳩山邸等、壮麗といわれる邸宅はいろいろ見たけれどでもここまでの廊下はない。  節すら無い、継ぎ目もない、無垢の一本の木を製材した廊下の床。 どう見積もっても樹齢数百年は下らないだろう。 日本にもここに見合うものがなく大正期に台湾からこのために持ってきたのだそう。 そして100年以上の時を経たその廊下は反りすら無い。 どれほどの労力と、技術と、財力が注ぎ込まれたか・・・  


階段の踏面を見てもご覧のような厚さ。 普通の家なら立派な大黒柱になるような断面。  広い部屋を仕切る襖も長大で普通の家屋のそれとはまるで違う。 なのに、その長い長押が重力で歪み落ちてくるようなことが一切無く100年たっても襖の滑りは建設当時のままだそう。
 
 


割烹料理屋での会話を思い出していた。

私 : 今品川に住んでいます
殿 : 私も若いころ品川に住んでいたよ
私 : 品川のどこですか?
殿 : 品川駅から坂を登っていった辺り。 そこは堤さんが買ってくれてねえ。

堤さんというのは西武グループの旧オーナー 義明氏。 すなわち品川プリンホテルがある場所には毛利家の屋敷があったということ。  六本木の毛利庭園は?と聞けば、あれは参勤交代の時用のもので ・・・・ 浮世離れしすぎた話で嘘つき爺さんと思っていたら実にリアルトークであった。



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