La montre la plus insolite des années quatre-vingt
・・・・・・・・・・ 80年代でもっとも魅力的な時計。
このブロッシャーの言葉は伊達ではない。 1970年から始まった日本発のクオーツショックはスイスの伝統的時計産業を瀕死の重傷に陥れた。 そんなスイス時計産業にとって先が見えない1983年、最大手のOMEGAが巨匠 Gérald Genta にデザインを託しTITAN & GOLD というかつて無い異種素材で勝負に出た時計である。 日本では当時30万円以上と安くはなかったこの時計は世界的にもよく売れクオーツ時計では異例の15年近くに渡るロングセールスとなった。 この時計によって付加価値をつければ高額な時計でも売れることを証明してみせスイス時計復活の礎となったと言っていい時計である。
70年代多くのスイスの時計メーカーが廃業し、世界トップクラスの時計メーカーとして知られるPatek, Vacheron, Audemars Piguet すらも開発費削減のためにムーブを共同開発しJaeger Lecoultre で委託生産したムーブを載せ、マニュファクチュールとして名を馳せたIWC ですら自社製機械の生産を止めてしまったような時代である。 いくら機械式ムーブメントに開発費を掛け、製造にお金をかけてもクオーツの精度には敵わず、先が見えない状況に追い込まれていたスイス時計が付加価値化に活路を見出し転換していったまさにその時代の主役の一つ。
この時計は自分史的にも大きな影響を与えている。
まだ子供だった当時、日本では”ラ・チタン” と呼ばれていたその時計を見たときの衝撃は忘れられない。 その頃チタンというと今のようにメガネやゴルフクラブに使われる汎用性のある素材ではなく宇宙船に使われるエキゾチックメタルという印象で、宇宙から降りてきたようなデザイン(当時はそう思った)、鈍く光るチタンに本来きらびやかさを演出する筈のゴールドを艶消し仕上げにする異端(金を艶消仕上げオンリーで使った元祖)の組み合わせにえも言われぬ興奮を覚え、チタンなる金属に強く興味と憧れを持ったほぼ最初だった。(今とは違い直ぐ目の前で見られるチタンは殆ど無かった)
この時計はたくさん売れた上にヴィンテージにもなりきれない中途半端な位置づけなお陰で中古市場にも溢れている。 多くの派生モデルがあり、SS & GOLD や TITAN & Paladium などもあるけれど、現在の中古価格は概ね安価な値段で、写真のような傷だらけのキチャナイ個体では2万円台で入手可能である。
なんとなくですが、昔のあの感動を2万円台でお手元に・・・ というキャッチコピーが心のなかに流れたような気がしましたのは、普段のチタンフレーム磨きの経験をもってすればこの時計の仕上げなど容易いと思ったから。
実際、エッジがない時計の仕上げというものは誤魔化しが効きミガキロンZで直ぐに変身。
加工性の悪いチタンに18KctGOLDを象嵌加工するという凝ったディテール。
最近のデカアツ傾向とは真反対の厚さ6mm 横幅33mmという小型。 チタンの軽さにサラっとした肌触りは嵌めてることすら忘れさせる一体感。 子供の頃のあこがれは今やクラシック。 金の面積多め、隠し難い昭和オッサン臭。 敢えて漂わせる臭気の深み。 ゴールドアドナイズドチタンフレームへの足がかり。
腐ってもOMEGAの底力
TITAN または TITAN & GOLD といえば時計好きの方には90年台のPORSCHE DESIGN by IWC を連想する方が多いかと思いますが、この時計がなかったならきっと無かったろう。
______________________
0 件のコメント:
コメントを投稿