吉野山の麓、吉野川に至る。
吉野から大峰、高野山から熊野に抜ける道は世界遺産にも登録された信仰登山のメッカだった由緒正しい場所である。 ”近畿の屋根”だとか”近畿の秘境”と呼ばれるかなり山深い場所で、大台ケ原に行くのにロードバイクが走れる道は国道以外にはほとんど選択肢がない。 補給を取れる場所などまるでわからなくって、名物こばしの焼き餅三つをポッケに忍ばせた。
堪えた。
車が多い。 バイクが多い。 ダンプが多い。 トラックが多い。 トンネルが多い。
基本ずっと登りだからスピードは乗らない。 トンネル内の舗装が悪いところも多いし、照明も暗い。 轟々と迫る大型車の音。 後ろから追突されないだろうか?と気が休まることがなかった。 近畿の秘境という俗称やら大台ケ原という語感からそこに至る道にまで勝手に秋の爽やかな風が吹き抜ける草原のようなイメージでいたこともあって、現実とのギャップが酷すぎる。
余りにも気持ちがやさぐれて引き返したほうがいいんじゃないかとすら思い始めていた。
そんなところに爺さんの日向ぼっこ。
「今日はええ天気やなあ。 大台ケ原行くんかい?結構なこっちゃ。 わしら若いころは長いこと中国にとられてそういう遊びは出来んかった。」
そうなんだよなあ・・・
国道から大台ケ原に続く県道に入っても車やバイクは多いままだったけど、ずいぶん静か。
清流を眺めながら持ってきていた焼き餅を食った。 出来たてじゃないけど十分香ばしい焼き餅の香りが口の中に広がる。 甘さ控えめで口の中にどんどん入っていく。 一気に三つ平らげた。
ナンバー196から始まる県道。
何の番号なのか?と思っていたら100m毎に数字が減っていく。 1km毎と言うのはよくあるけど、スピードが乗らない登りで100mという距離が微妙で思うほどすぐにはナンバーが若くなってはいかない。 最初は196=19.6kmは気分的に相当堪えた。 でも、100を切る頃からは肌に感じる空気はどんどん冷たくなって回りの紅葉を楽しんでいた。
1000~1600mの山々が連らなる近畿の屋根。
高度を上げ気温が下がるに従って木々は緑から紅葉、そして殆ど落ち葉と変わっていった。
そして雲ひとつなかった空は雲と霧に覆われだした。
大台ケ原に着けば見ての通りバイクと車だらけ、そして霧で視界も殆ど無い状態。
この場所は雲が集まりやすい場所。 日本最大の多雨地帯で年平均降水量は驚きの5000mm 超である。 熊野灘からの無限の水分供給源に地形と気温の急激な低下で空気中の水分が一期に凝縮する。 山奥にしか見えないこの場所は三重の尾鷲港から直線距離で15kmしか離れておらず海に近い山奥。
ぐったりと腰を下ろし、食するのはこれ。
うどんと柿の葉寿司の組み合わせ。 関西でも和歌山北部、奈良南部、大阪南部の吉野川に近い辺りで特に見られる組み合わせ。 (もっとも和歌山じゃ和歌山ラーメンになれ鮨の組み合わせのほうが一般的ですが・・・) 冷えた体にしみわたった。
ただ、いくら染み渡っても自転車で大台ケ原はもういい
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