関門海峡である。
山口ではカルスト台地やら角島を走り、肉やら魚を食べ散らかそうと思っていたのに大雨にやられた。 そんなことですべて断念、下関に流れ着いた。
断念したからといってやることはいくらでもある。 なんといってもここ下関はフグの水揚げ日本一である。 夏の河豚?とも思ったが店のおばちゃん曰く 「養殖トラフグよりこの天然の真フグのほうがずっと美味しい。食べてみて。」 とやたら薦めてくる。
真フグなんて聞いたこともなかったが、フグのテッサと湯引きに目がない私はその身をポン酢にくぐらせ口に放り込んだ。 ・・・ 「うーんポン酢の味」 歯ごたえ悪し、味少なく、湯引きはパサパサ。
私は、気持ちを切り替え二回戦に向かった。
人だかりの店で買った。
おばはん曰く 「これは最高のトロ、それにウニはミョウバン使ってないし甘くておいしいよ。食べてみて」
マグロなら間違いないだろう。 それにこの辺りは赤うにが美味しいとも聞いている。
只、おばはんの言葉 「トロにある白い筋はスジじゃなくて脂だから 」 には、それは違うやろと突っ込んではいた。
私は海沿いのベンチに陣取ると、ウニを口いっぱいに頬張った。・・・ 「苦っ」 舌にいきなりのアタック。
嘗て味わったことないほど苦い。 またしても騙された。 私は憮然として、さっきのオバハンの元に戻り言い放った 「ミョウバン入ってないって言ってたけどめっちゃ苦かったわ。 これ何処のウニ?」
そこでオバハンが返してきた言葉に私はズッコケた ・・・ 「これはチリ産よ」
何故最後だけ正直なのか・・・
しょんぼりして私は関門海峡大橋を望む巌流島にわたった。 武蔵と小次郎が決闘したあの島である。
空は時折雨、口の中は今だミョウバンの苦味でいっぱいだった。
私の周りに会津最後の殿様、松平容保ファンで長州人は信用ならんと言って憚らないのがいる。
今まではそれを聞いても大羽越列藩同盟の戯言くらいにスルーしていたのだが、この実体験を持って今までのことを心のなかで侘び、考えを改めることになった。 今後は長州には心して掛かることにする。
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