チタンフレームにセットされたカンパニョーロに惹かれてroad.cc の記事を読んでみましたら、カンパの創業地ヴィチェンツァ工場のリストラの話でした。
ざっくり言うとカンパニョーロのブランド力だけではシマノやスラムといったコンペティターに対して競争力がなくなってきてマーケットシェアも下がっている。 その為生産はルーマニアに移されイタリアヴィチェンツァでは製品技術開発をメインにする。 それに伴い399人中68人がリストラされるという内容。 しかもかなり強硬に、そして速やかに生産拠点移転をする緊迫感のようなものまで伝わってくる。 感覚的には日本にいて周りを見回してもカンパはやはり人気あるし”Made in Italy” を捨てて他のヨーロッパに移転しなきゃならん程困ってたん?・・・と。 確かに、ここ数年カンパ製品を買うとクランクといったカーボン製品にまで”Made in Romania”のシールが張ってあって「あれ、イタリアじゃないん?」とガッカリする瞬間は何度かあったといえばあった。 ただ、それとて日本ブランドも裏を返せばバッチリ”中国製” なんて書いてあることはごく普通のことだし、日本ブランドの中国生産に当たるのがヨーロッパでは東欧の国々なのかと言うくらいの認識だった。 カンパとしては東アジアにOEMに出して偽物や知的財産が流出などするより、ルーマニアの自社工場ということらしい。(すでに低ランク製品を製造する台湾工場はある)
最近、日本ブランドのものも中国製に混じって、ベトナム製、ミャンマー製といった東南アジア諸国生産のものを目にする機会が増えている。 資本家は人件費が安い地に資本を投下し投資効率を高め利益を回収する。 中国の人件費が上がってくれば、ベトナム、ミャンマーへと安い労働力を求めて移動する。 文章の中で一つ驚いたこと。 ルーマニアの生産コストが台湾やイタリアの1/3.5とあった。 今や一人あたりのGDPが日本より高い台湾がイタリア並みの生産コストということはさておき、先進国が集積した西欧とそれほど離れていない地続きの東欧の生産コストがそんな安値で放置されていることに驚いた。 人・物・金が自由に移動するグローバル化の時代、しかも同じ欧州内、ルーマニアの安い人件費もそう長く持つようには思えないが。
ただ、読み進めていくと競争力、マーケットシェアが工場移転で解決されるような主に生産コストの問題ではないことに気づく。 1998年までの30年でツール・ド・フランスで勝利したカンパニョーロ搭載バイクは25。 それに対してそれ以降の16年でツール・ド・フランスで勝利したカンパニョーロ搭載バイクは2006年のOscar Pereiro そして去年の Vincenzo Nibali が属するわずか2チーム。 2015年シーズンの17のUCIプロチームでカンパを採用しているのはわずか3チーム、シマノが13チーム、スラムが1チーム。 コンペティティブなレーシングパーツを標榜しているメーカーとしてはこの状況は大変まずいらしい。 最近レースにはまるで興味が無いので気付かなかったのだけどレースシーンでここまでシマノ無双状態になっているとは知らなかった。 技術的な動きとしても機械式11速の評判は良かったものの電動はまるで期待はずれ、シマノに大きく水を開けられその他のメーカーにとってはシマノ品質がベンチマークになった。 ディスクブレーキ化への流れでも完全にスラム、シマノの後塵を拝してしまっている・・・ 1970年にカンパのヌオーボレコードで現在の変速機の形が出来上がって5速から7速になっただけで20年。1991年シマノデュアルコントロールレバーが出来て次の20年で8速から11速、そして電動化、ディスク化と変化のスピードは他の分野同様どんどん早くなっている。 今ある技術の差を取り戻せると考えるのはメルヘンで、どんどんその差が開くと考えるのが自然なのではないでしょうか? 焦りさえ感じるこの行動はもしかするとカンパにとって90年台初めのMTBパーツ市場撤退の悪夢から来るのかもしれません。 なんだかブランドを価格競争に晒して瀕死の重傷を負った日本の家電メーカーと姿が重なりました。 同じ土俵で戦うのがまずいと気付いても価格で戦おうとするのか? もう技術的なことはそこそこに、すっかり市場から消えてしまった研磨に気合が入りまくったシルバーパーツなど一部は懐古に走るだとか、そういう需要は間違いなくあるとおもうのだけど・・・ 少なくともこの流れは”終わりの始まり ”な気がしてなりません。
Related to:
http://road.cc/content/news/141525-campagnolo-strike-threat-1-5-jobs-cut-vicenza-hq
http://feticizm.blogspot.jp/2013/09/argent-crisis.html
________________________________